非国民

非国民

森巣博



カシノ小説家森巣博。

ギャンブル小説の走りといえば、阿佐田哲也。

阿佐田哲也は

麻雀小説という前例のないジャンルで、独創的に、天才的に、

かつ、文学的にも、比類この上ない金字塔を華麗に打ち立てた巨人だ。

翻って、現在、

存命する作家の中で阿佐田哲也の系譜をうけつぐギャンブル小説家として

挙げられるのが森巣博。

手にするのはパイではなくカード。

カジノ小説の第一人者。

(正しくはカ”ジ”ノではなく、カ”シ”ノとのこと)

バカラメイン。

パイゴウ(牌九)について書いたのもあったかな。

アウトローなギャンブル小説家だが、姜尚中と共著で新書も書いてるインテリ。

オーストラリア在住。

さて、

非国民。

おれです。

・・・

それは、置くとして。

本書には、

職権を乱用する警官。

覚せい剤中毒の元やくざ。

シンナー中毒の元暴走族。

コカイン中毒博打狂いの元トレーダー。

が登場する。

彼らは、

薬物中毒者が依存から脱却するために、共同で生活する「ハーフウェイハウス希望」の住人。

亮太という新入りがハウスを訪れるところから物語が始まる。

住人たちは、


”<すべてが許される明日>をまた夢見ながら、

つらい過酷な<今日>を耐える。忍ぶ。打たれ越す。”



ワルデコ(悪刑事)たちの悪行三昧。

亮太とバイク(女の子)の青春。

スワードの金策。

鯨の一手勝負。

お下劣な表現テンコ盛りだが、

面白い。

良構成、随所にオチを散りばめながら、きっちりラストまで揚げてくれます。

ストーリーテラーとしての手腕は相当なもの。


「さび抜き」「倶利伽羅落とし」「憑依と解脱」

カシノ(日本は”ジ”)描写はお手のもの。

臨場感あり。

裏カジノ店のバックが警察官僚で裏金作り。

生活安全課警察官が、聞き取り調査の名目でパチ屋で当たり台を確保。

どんな高級料亭、どんな高級クラブも3千円ぽっきりで豪遊。

押収した覚せい剤横流し。

係長の横領方法やら。

警察内部汚職の髄が書かれている。

フィクションだから笑ってられる。

だが、

真実はノンフィクションなんだろーよ。



施設の金策、

ワルデコによって壊されたバイクの仇討ち、

ギャンブルを通して仲間で乗り越えていく。

バイクに起こるカタストロフは哀しみの極致。

流石。



この小説の主題の一つが薬物依存からの脱却であるのなら、

一見それは果たされているように見える。

<すべてが許される明日>を克服、

エスポワ、スワード、鯨が回生に成功し、

バイクも回復を示唆する表現で幕を下ろしている。

強いて言えば、

バイクの笑顔を含めた4人の完全な回復シーンと、

ワルデコ二人が、いたぶった料亭の女将、客引きに倍返しされ、

スワードとのKO義塾OB対決でボコられる、etc

やら、悲惨これ極まれり的大団円で溜飲を下げたかった。

億のリアリティーをね。




”「勝負の機微は駒の上げ下げ」

負け手は、最小賭金で打たれ越し、勝ち手には大賭金(おおだま)を仕掛ける。”


”勝負手を外した時はツイてないんだから、次手から抑えた張り方をするのが作法”


"ウケ(勝ち)に入った時、ツラ目が出ると臆病になり、ツラを切りに逆張りする。それでは勝てない。

ツラの時こそぶんぶん勝負。”

イエッサー。









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