感情教育

感情教育

中山可穂


ヒマ(金がない)から本ばかり。

昔読んだのを読み返す日々。

記憶力ないのが幸い、展開覚えていなくても新鮮に読める。

中山可穂、いいね~。

エロくて。粋で。熱があり美しい。

好きな作家のひとり。

この本は3章から成っている。

那智を主人公に第1章。

理緒を主人公に第2章。

二人が出会ってから第3章が始まる。

恋愛小説。女と女の。


1章

ある女が病院で赤ん坊を産み落とし、その日のうちに病院を去る。

そこからストーリーが始まる。

赤ん坊の女の子は那智という名を与えられる。

孤児として、里親に引き取られ成長していく那智。里親は職人。

成長し、建築士のキャリアを進む。

那智には向上心があり、建築家としてステップアップし、一級建築士の資格を取得するほどの才覚もある。

だが男運がない。

避妊しないでセックスし、生理がこない那智をシカトする中坊。

ダメンズウォーカーを地で行くアナルファックDV男。

結婚した7つ年上の男は、マザコン束縛カマッテ君かつ毎日抱かせろ絶倫男と判明する。

そう、那智は魔性の女だった。

男たちはその美貌と妖艶な肉体に憑りつかれ、我を失い翻弄されていく。

男たちが感情を爆発させる一方、感情的になることを厭う那智。

結婚した那智は女の子を授かる。

建築士としてキャリアを積み、母親となった結婚7年目、

那智の前に現れた運命の人とは。


2章

理緒の母親はホステス。

名が那智の母親と同じ。

父親は遊び人。自分の娘を自演誘拐し、妻の実家から金を巻き上げる類の男。

父親は失踪し、母親は専ら夜の仕事に励む。

幼い理緒を育てたのは同じ長屋の任侠道の男だった。

母親の実家の寺に引き取られる理緒。

成長し、劇団を立ちあげ、脚本を書き、劇団をたたんだ後は、ライターとしての道を歩む。

男には興味がなく、恋愛対象はつねに女。

海外を放浪し、帰国後、LGBのカップルを対象としたノンフィクションの連載を持つ。

その担当編集者で、初めて付き合った”男”との同棲は

結婚にアンチテーゼをつきつけた理緒の手によって

あっけなく終止符が打たれる。

男と理緒の間に厳然とある埋まらない溝。

それは、親に対し抱えている愛情量の多寡。

どうしようもない家族的なものに対する欠落感と。

やはり、理緒は女が好きだった。

取材の過程で理緒は、那智と出会う。



3章へという流れ。






存在証明のためのルーツを辿る旅。

母親探し。

流れ的に二人は姉妹という設定にするのが定石なんだろうが。

その事実を明らかにしていないことはもはやどうでもいい。

那智という男に惚れられる女と理緒という女に惚れられる女。

感情的になることがなく生きてきた女と感情のままに生きてきた女。


筆が走る。

那智が、湘南のホテルで、理緒に抱かれながら、感情を炸裂させる。

”お願いあたしをばらばらに壊してあたしの体を引き裂いてあたしのあそこに楔を打ち込んであなたと片時も離さないで。”

こんなこと言う女じゃない女にこのセリフを言わせてる。

かぎかっこなしで。

エロい。

怒鳴り声を上げる夫の前で号泣し、子供を置き家を出る。

感情が解き放たれる姿は生々しく、胸打たれる。

美しいケモノの咆哮。慟哭。

ケモノという表現は可穂さんの作品ではよく出てくる。

ハッピーエンドで終わり何より。

この作品は二人でエピローグを迎えるが、なんか違和感。

子供、カップルの3人で暮らす姿のエピローグは他の作品だったっけ?

まあいいや。

よい小説。

この小説は同性愛者へ捧げられるラブソングである。

甘く、切なくも鋭利なメロディーが美しく満ちている。

一方で、

確かに聞こえてくるのは人間賛歌。

生い立ちに痛みを強いられ、感情を閉じ込めてきた小さな魂が、傷つき、傷つけながらも逞しく成長を遂げ、

自らを捕え、縛り、丸め、同化させようとする社会一般種々雑多うぞーむぞーな概念の頚木を断ち切り、

囚われの感情を解き放つ。

いいんだよ。

自分の気持ちに正直になっていいんだよ。

という全肯定。

世の中のどれだけの人間が、過不足ない愛情に満ちた幸せな幼年期を過ごしてきたといえるだろう。

人は、得られなかった愛情を胸に秘め、幼年期を旅立つ。

蛹が孵化するように。

蝶に孵るかもしれない。蛾と孵って光を求めて闇を羽ばたくかもしれない。

蛹のまま朽ちるかもしれなければ、毒虫となって姿を現すかもしれない。

ザムザのように。





脱線。


ウィキペディアによると可穂さんは

「孤高の全身恋愛小説家」と称されているらしい。

激しく頷ける。

王子ミチルの映画化を脚本ケチつけて没にさせたとか。

エピソードがすげーよ。

かっこいい。

そら惚れられるわ。

おれのこの人の読書歴はケッヘルで止まってるんで

いろいろと読むの楽しみ。

ちと古いがインタビューのリンクはっとこう。

作家の読書道158回


この記事へのコメント